価値探究の道

投資や競馬の世界で儲けを追求するに世間で思われている価値と実際の価値のギャップを見つけること。そんな思いで書かれたブログです

「リンカーン」を見て

先日久々に映画を見ました。

アメリカで最も尊敬されている大統領をテーマにした映画でしたので一度は見てみたいと考えていました。映画の中のリンカーンはただ単に高潔な人物として描かれているだけでなく、高邁な理想を持ちつつも、理想だけに溺れずそれを実現させるためる現実的手段を忘れない、実務家の側面も描かれていたと思いました。

自分の理想である「奴隷制度の廃止」を実現するためには、アメリカの下院で2/3以上の得票が必要であり、今のままではそれは実現できない。

それを実現するためには、自分の党内部の反対派の要求を呑む事も、敵政党の議員の中で次回の当選が怪しい人間に次の職をちらつかせてでも賛成票を獲得しようとするなど、目標を達成する為にはややもすると手段を選ばない様子も描かれていました。

こう書きますと我々の思い描いたリンカーンのイメージを崩すように思いますが、理想論を語る反対派には高邁な理想を唱えて賛成を促し、自分の保身第一の反対派には、経済的な安心を保障する等硬軟織り交ぜた説得策を採っているのです。

リンカーンが何故これ程迄に自分の理想の実現を急いだかと言いますと、南北戦争奴隷制度の存続を願う南部と奴隷制度の廃止を願う北部による戦争ではあったのですが、北部の人間も決して一枚岩ではなかったからです。

南北戦争の趨勢が見え始め、北部側の勝ちが見えてくると北部側の人間にも奴隷制度の存続を願う人間が出てくる、その雰囲気を察したリンカーンが戦争の終わるまでに、奴隷制度の廃止を憲法に織り込ます事を目論んだのです。

後の我々から見ますと、南北戦争による奴隷制度を廃止した事がその後のアメリカの発展に繋がったのですから、この当時の人は何に反対していたのだろうかとも思うのですが、やはり人間は急な変化を嫌う生き物で今の制度の悪い点が見えていても現状制度の継続を願う、もっと言うと新しい変化を恐れるのだなと思いました。

これを今の日本に置き換えるとどうでしょう。戦後の日本を支えた制度が年金制度にしろ選挙制にしろ色々問題が出ているにも関わらず我々は、何とか今の制度の下で何とかならないかと願っているのです。

年金制度を失くす事も、移民を引き受けることもこれまで日本がしてこなかった事ですので恐れる気持ちは分からなくもないですが、それは奴隷制度のなくなる前のアメリカ人が、色々恐れていた事と同じではないでしょうか。

この映画を見て確かに日本は先の見えない状態ではありますが、その事に対して必要以上に恐れるべきはないなと思った中田でありました。